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自分でできる遺産分割:遺産分割協議書の書き方、雛型・書式と記載例

自分でできる遺産分割|遺産分割・遺留分に強い相続の弁護士無料相談 - 名古屋市・愛知県
相続が発生した場合、遺産分割協議書を作成するケースが多くあります。遺産分割協議書は、遺産の分け方を確定させる重要な書面であるため、その具体的な書き方やケースに応じた記載方法を知っておく必要があります。
以下では、名古屋の弁護士が実際の書式や雛形を紹介しながら遺産分割協議書の役割、書き方や注意点を詳細に解説します。

1.遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、被相続人(亡くなった方)の相続人間において、遺産をどのように分けるかについて協議した結果を書面にしたものをいいます。遺産分割協議は、相続人全員が合意することによってはじめて成立します。例えば、相続人が10人いたとして、9人が合意しても残りの1人が合意しなければ、協議は成立しないことになります。

2.遺産分割協議書を作る目的

遺産分割協議は相続人全員の合意によって成立し、書面の作成自体は義務ではありません。しかし、次のような理由から、遺産分割協議がまとまった場合は必ず遺産分割協議書を作成することをお勧めします。

2-1.後日の紛争を防止する

遺産分割協議書を作成することによって、遺産分割協議で合意した内容について、証拠を残すことができます。証拠がないと、後日一部の相続人が「そんな合意はしていない」などと協議内容を争ってきた場合に、言った言わないの話となってしまいます。そのため、合意が成立した場合は速やかに遺産分割協議書を作成する必要があります。

2-2.遺産の内容が整理される

遺産分割協議書には、通常各人が取得する相続財産や承継する債務などを記載します。そのため、作成の過程で各相続人が遺産の内容に漏れがないかを確認することができ、遺産の内容が一覧として整理されます。

2-3.遺産分割協議結果の対外的な証明となる

遺産分割協議が成立した場合であっても、遺産分割協議書がなければ、協議内容の成立を証明することは困難です。不動産や自動車などは、協議内容にしたがって名義変更されれば、名義変更後の登記簿謄本や車検証で所有者の変更を確認することができます。しかし、登記や登録制度がない遺産の場合、第三者に対して所有権などの取得を証明するためには、遺産分割協議書が必要となります。

2-4.相続手続きで使用する

不動産の名義変更、預貯金の解約、相続税の申告等において、遺産分割協議書が必要となる場合があります。特に法定相続割合と異なる割合で遺産分割した場合は、実際の相続手続で遺産分割協議書が必要となります。

また、実際の相続手続においては、遺産分割協議書のほか、相続人全員の印鑑証明書や戸籍謄本の提出も求められます。

3.遺産分割協議書の雛形、書式、記載例

3-1.遺産分割協議書のモデル書式(基本書式)

遺産分割協議書(基本書式)

遺産分割協議書

 

 被相続人 ○○(平成○○年○○月○○日死亡、最後の本籍地 ○○○○○○)の共同相続人全員は、本日、遺産分割協議を行い、下記のとおり合意した。

1.相続人 ○○ は、次の不動産を取得する。

不動産(不動産の記載例参照)

2.相続人○○は、次の預貯金を取得する。

 預貯金(預貯金の記載例参照)

3.相続人○○は、次の株式を取得する。

 株式(株式の記載例参照)

4.相続人○○は、次の自動車を取得する。

 

以上の遺産分割の合意を証するため、本書を作成し、相続人全員が署名捺印する。

 

 平成  年  月  日

 

              (住所)

                                       

              (氏名)                     ㊞

                                       

 

              (住所)

                                       

              (氏名)                     ㊞

                                       

 

 

3-1-1.被相続人(亡くなった方)の記載例

(簡易な記載例)

被相続人 ○○(平成○○年○○月○○日死亡、最後の本籍地 ○○○○○○)

 

(基本的な記載例)

被相続人 ○○ ○○

     (昭和○年○月○日生、平成○年○月○日死亡)

最後の本籍 ○○

最後の住所 ○○

 

(相続登記の際に、登記簿上の住所が死亡時の住所と異なる場合)

被相続人 ○○ ○○

     (昭和○年○月○日生、平成○年○月○日死亡)

最後の本籍 ○○

最後の住所 ○○

登記簿上の住所 ○○

 

3-1-2.個別財産の記載例

遺産分割協議書に記載する個々の遺産については、記載方法の決まりはありません。もっとも、不動産や預貯金、株式などの相続手続きがスムーズにできるよう、できるだけ個々の財産を詳しく特定したほうがよいといえるでしょう。

 

3-1-2-1.不動産の記載例

不動産は、法務局にて登記簿(全部事項証明書)を取得の上、登記簿の記載のとおり正確に記載しましょう。具体的には、次のように記載します。なお、登記簿に記載のある不動産番号はなくても構いません。不動産の相続登記の方法は、以下のコラムを参照ください。

https://www.isan.info/self/souzokutouki/

相続登記の申請書、相続登記の必要書類

(土地の記載例)

  所  在  名古屋市中区○○一丁目

  地  番  ○○番

  地  目  宅地

  地  積  ○○.○○平方メートル

 

(建物の記載例)

  所  在  名古屋市中区○○一丁目○○番地

  家屋番号  ○○番

  種  類  居宅

  構  造  木造かわらぶき2階建

  床 面 積  1階 ○○.○○平方メートル

        2階 ○○.○○平方メートル

3-1-2-2.預貯金の記載例

預貯金は、金額までは記載せず、銀行名、支店名、預貯金種別、口座番号、までを記載するのが通例です。

 

銀行等の預金の記載例

○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号:○○○○○○

○○信用金庫 ○○支店 定期預金 口座番号:○○○○○○

 

ゆうちょ銀行の記載例

ゆうちょ銀行 通常貯金 記号○○ 番号○○

ゆうちょ銀行 定期貯金 記号○○ 番号○○

 

JAの記載例

JAについては、出資金がある場合もあるため、事前に問い合わせるなどして確認しておくとよいでしょう。

○○農業協同組合 ○○支店 普通貯金 口座番号:○○

○○農業協同組合 ○○支店 定期貯金 口座番号:○○

○○農業協同組合 ○○支店 出資金○○口 証券番号:○○

3-1-2-3.株式の記載例

株式の記載例

○○株式会社 普通株式 ○○株

3-1-2-4.自動車の記載例

自動車の記載例

自動車登録番号 名古屋123わ1234 車台番号○ー○○○○○○○○○

3-1-2-5.葬儀費用の記載例

葬儀費用は、原則として喪主が負担するというのが近年の裁判例ですが、相続人全員の合意により、その負担者を定めることができます。

3-1-2-5-1.特定の相続人が負担する場合

被相続人に係る葬式費用は、全て相続人○○の負担とする。

3-1-2-5-2.複数の相続人が負担する場合

被相続人に係る葬儀費用は、相続人○○及び○○がそれぞれ2分の1ずつの割合で負担する。

【関連QA】葬儀費用は、遺産から払ってもよいのでしょうか?

3-1-2-6.相続債務の記載例

相続人○○は、○○銀行からの借入金○○円を負担する。

4.作成にあたっての注意点

4-1.文章はできればワープロで作成する

遺産分割協議書は、相続人間の合意成立を証明する重要な文書となります。そのため、手書きで文字が読めない、判別できない、といったことがないように、できればワープロで作成し、署名捺印のみ自署することが望ましいといえます。

4-2.日付は遺産分割協議がまとまった日を記載する

遺産分割協議書の日付は、原則として遺産分割協議の成立日を記載します。協議の成立日とは、全員の合意が得られた日をいいます。

4-3.署名欄の住所、氏名は自署する

署名欄の住所、氏名の記載は、法律上自署しなければならない、といった決まりはありません。しかし、後日の争いを防ぐため、住所、氏名は必ず相続人自身に自署してもらうことが望ましいといえます。

4-4.実印で押印する

実印とは、住民登録をしている市区町村に印鑑登録した印鑑のことをいいます。

 

遺産分割協議書には、相続人全員の実印を押印します。実印を押印することで、後日遺産分割内容についてトラブルが発生した場合に、「その文書は他の相続人が勝手に作成したものである」などと主張されたとしても、文書の真正は容易に立証することが可能となります。

4-5.印鑑証明書を添付する

実務上、遺産分割協議書には実印を押印し、相続人全員の印鑑証明書を添付します。印鑑登録証明書を添付しておけば、相続人の印鑑が遺産分割協議書作成当時の実印であることまで立証できるため、後で実印を変更して「この印鑑は自分の実印ではない」等主張された場合にも対応が可能となります。

4-6.複数枚にわたるときは、契印を全員分押す

契印とは、書類が2枚以上にわたる場合、その綴じ目に2枚にまたがって押印することをいいます。2枚以上にわたる書類が一体のものであることを明確にするために押します。

遺産分割協議書が複数枚にわたるときは、契印を全員分押す必要があります。契印は押し忘れも多いため、郵送などで押印をもらう場合には、A3用紙に印刷するなど、複数枚にならないような工夫をするのも検討されるとよいでしょう。

4-7.何通作成するかについて決まりはない

遺産分割協議書を何通作成するのかについて、特に決まりはありません。実務上は、原本を必要とする人の通数分を作成することが多いといえます。

5.まとめ

遺産分割協議書は、相続人間の合意を証する重要な書面です。

遺産分割協議が成立した場合は速やかに協議書を作成し、後日のトラブルを予防することが必要です。本コラムを参考に、実際の事案に応じて協議書を作成して頂ければと思います。

また、当事務所では、弁護士に、継続的に相談しながら、自分で遺産分割をすすめられるアドバイスフォロープランがあります。最大3時間まで、電話での相談も可能です。
遺産分割の話し合いのすすめ方、遺産分割協議書の書き方など、弁護士に相談しながら自分で遺産分割をすすめたい方は、ぜひご活用ください。

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