遺産分割協議書の提出先は、
①銀行、②法務局、③証券会社、④税務署、⑤運輸局、⑥市区町村役場等です。
以下それぞれについて解説します。
1.遺産分割協議書の提出先
遺産分割協議書は、共同相続人間で遺産を誰がどのように取得するかを記載した書面です。
主な提出先は、以下のとおりです。
①銀行
相続財産に預貯金がある場合、遺産分割が必要となります。
なお、従前、預貯金は可分債権として遺産分割の対象とはならないという扱いでしたが、平成28年の判例変更により、遺産分割の対象となりました(最大決平成28年12月19日)。
もっとも、令和元年7月1日施行の民法改正により、預貯金の一定割合については,遺産分割前であっても各相続人が単独で払戻しをすることができるようになりました(民法909条の2)。
②法務局
相続財産に登記されている不動産が含まれている場合、法務局で相続登記が必要となります。相続登記を行うことにより、不動産を取得した方に対する新たな権利書(登記識別情報)が発行され、売却等が可能となります。
③証券会社
相続財産に株式や投資信託等の有価証券が含まれている場合、証券会社で相続手続きを行う必要があります。多くの銘柄を所有している場合でも、株式を発行している個々の会社ではなく、証券会社でまとめて手続きを行います。
④税務署
相続税がかかる場合、又は本来は相続税がかかるものの特例の適用により相続税がかからない場合、税務署に相続税の申告を行う必要があります。このとき、通常は遺産分割協議書を提出します。
なお、相続税がかからない場合、又は特例の適用がなくても相続税がかからない場合は、そもそも申告を行う必要はありません。
⑤運輸局
遺産の中に被相続人が所有者となっている普通自動車がある場合、運輸局で相続手続きが必要です。その際、遺産分割協議書も提出します。ただし、査定額が100万円以下の自動車は、遺産分割協議成立申立書を提出すれば構いません。
また、軽自動車の場合は、遺産分割協議書や遺産分割協議成立申立書の提出は不要です。
⑥市区町村役場
遺産の中に未登記建物がある場合、法務局ではなく、市区町村役場の資産税課で未登記建物の所有者変更届を行う必要があります。
未登記建物とは、登記されていない建物(建築はしたものの、法務局への登記をしていない建物)のことをいいます。遺産の中に未登記建物があるかどうかは、固定資産税の課税明細の中に、家屋番号のない建物があるかないかで確認することができます。
登記されている不動産(土地、建物)は、相続登記を行えば、自動的に固定資産の課税台帳も更新されます。しかし、未登記建物はそもそも登記がされていないことから、法務局での相続登記ではなく、市区町村役場での届出が必要となります。
2.提出する際に必要となる書類
遺産分割協議書を提出する際、通常は以下の資料も同時に提出する必要があります。なお、手続きによってその他の資料が必要となる場合もあります。
①戸籍謄本一式又は法定相続情報一覧図(法定相続情報証明制度)
遺産分割協議書は、相続人全員が合意して作成した書面です。被相続人が死亡した事実や、遺産分割協議書に署名捺印した相続人が相続人全員であることを、戸籍謄本又は法定相続情報一覧図(法定相続情報証明制度)で証明する必要があります。
②相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書は、相続人全員が実印で押印します。押印された印影が、各相続人の実印であるかを確認するため、相続人全員の印鑑証明書も必要となります。