回答
他の相続人が相続放棄をすることによって、自分が相続する借金(金銭債務)が増えるかどうかは、ケースにより異なります。
他の相続人が相続放棄をすることによって、自分の法定相続分が増える場合は、相続する借金(金銭債務)もその割合で増加します。一方、他の相続人の相続放棄によっても、自分の法定相続分が増えない場合は、相続する借金(金銭債務)も増えません。
解説
1.相続放棄の効果
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。そのため、相続放棄をした者がいる場合、放棄をした相続人を除外して、法定相続分を算定することになります。
具体例
例えば、父が死亡し、相続人が妻と子2名の場合、法定相続分は、妻が2分の1、子2名がそれぞれ4分の1です。この場合に、妻が相続放棄をすると、妻は初めから相続人ではなかったものとみなされるため、亡父の法定相続人は子2名のみとなります。そのため、子2名の法定相続分は、それぞれ2分の1となります。
2.借金などの金銭債務の相続
相続債務のうち、借金などの金銭債務については、遺産分割をするまでもなく、相続開始(被相続人の死亡)によって当然に分割されます。
例えば、亡くなった父に借金1000万円があり、それを妻と子2名が相続する場合、父が亡くなった日に、妻が500万円(2分の1)、子2名がそれぞれ250万円(4分の1)の債務を負担することになります。
相続放棄と他の相続人の法定相続分
他の相続人が相続放棄をすることによって、自分の法定相続分が増える場合は、相続する借金(金銭債務)もその割合で増加します。
例えば、先の例で妻が相続放棄をした場合、子2名の法定相続分はそれぞれ2分の1になります。そのため、相続する借金も、それぞれ500万円となり、妻が相続放棄をしなかった場合と比較して、それぞれ250万円多くなります。
一方、他の相続人の相続放棄によっても、自分の法定相続分が増えない場合は、相続する借金(金銭債務)も増えません。
例えば、先の例で子2名のうち1名が相続放棄をした場合、妻の法定相続分は2分の1のままである(配偶者の相続分に変更がない)ため、妻が相続する借金(金銭債務)は500万円のままです。子の一人が相続放棄をしても妻の法定相続分が増えないため、妻が相続する借金(金銭債務)も増えません。
ただし、相続放棄をしなかったもう一人の子については、法定相続分が4分の1から2分の1に増えるため、相続する借金(金銭債務)は500万円となり、もう一人の子が相続放棄しなかった場合に比べて250万円増えることになります。
参考条文
民法
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。