民間金融機関の住宅ローンの場合、団体信用生命保険への加入が必須となっています。そのため、被相続人の死亡によって、住宅ローン債務は生命保険会社によって弁済されるため、相続人に支払い義務はありません。
一方、フラット35の場合、団体信用生命保険への加入が必須ではないことから、被相続人の死亡によって住宅ローン債務が消滅しない可能性があります。また、加入していたとしても、保険料を年払いにしており、保険料が未払いになっていた場合は、保険が失効しているケースも考えられます。仮に住宅ローンが残ってしまった場合は、当該債務を法定相続人が法定相続分に応じて負担することになります。
目次
解説
1.住宅ローンの相続
相続が発生した場合、住宅ローンなどの金銭債務は、当然に分割されます。例えば、被相続人の住宅ローン債務が2,000万円残っていた場合、相続人が妻と子2名のケースだと、妻は2分の1の1000万円、子はそれぞれ4分の1の500万円の債務を支払う必要があります。
2.住宅ローンと団体信用生命保険
2-1.団体信用生命保険とは
団体信用生命保険(いわゆる団信)とは、住宅ローンの債務者を被保険者、住宅ローン融資をする債権者である銀行等を保険契約者及び保険金受取人とする団体保険(生命保険)のことをいいます。
団体信用生命保険に加入していると、被保険者である住宅ローン債務者が返済期間中に死亡または高度障害となった場合等に、その時点の住宅ローン残高相当額の保険金が銀行等の債権者に支払われます。そのため、相続人は住宅ローン債務を負担する必要がありません。
2-2.民間の住宅ローンの場合
民間の住宅ローンの場合、団体生命信用保険への加入が必須となっています。これは、被相続人の死亡によって、銀行の融資が回収できなくなるリスクを回避するためです。したがって、住宅ローンが民間の銀行のものであれば、被相続人の死亡によって保険会社が住宅ローンを代わりに弁済してくれます。
2-3.住宅金融支援機構の住宅ローン(フラット35など)の場合
一方、住宅金融支援機構の住宅ローン(フラット35など)の場合、団体信用生命保険への加入は必須ではありません。仮にフラット35契約時に団体信用生命保険に加入していない場合、または加入していたとしても、保険料を年払いにしており、保険料が未払いになっていた場合は、保険が失効しているケースも考えられます。そのような場合、相続人が法定相続分に応じて住宅ローン債務を分割承継することになります。
3.事業ローンやアパートローンの場合
住宅ローンではありませんが、被相続人が事業ローンやアパートローン融資を受けていた場合は、住宅ローンとは異なる取扱いがなされることがあります。
具体的には、事業ローンやアパートローンで不動産に抵当権がついている場合に、当該不動産を取得する相続人が事業ローンやアパートローンを支払っていくようなケースです。
このようなケースでは、免責的債務引受契約(めんせきてきさいむひきうけけいやく)によって、一部の相続人が債務を負担し、残りの相続人は債務の負担を免れる場合もあります。
なお、免責的債務引受契約とは、債権者と相続人全員との合意によって、特定の相続人が金銭債務全額を負担し、残りの相続人は負担を免れる、といった契約のことをいいます。