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相続のよくあるご質問
遺言書を見つけた場合、開封してもよいですか

遺言書を見つけた場合、開封してもよいですか?

封印された遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません(民法10043項)。したがって、遺言書を見つけたからといって、勝手に開封することはできません。
公正証書以外の遺言書については、家庭裁判所において遺言書の検認手続を受ける必要があります。封印された遺言書の開封手続も、検認の申立に準じて行われます。
なお、誤って開封してしまった場合でも、それによって遺言書が無効となるわけではありませんが、家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処される可能性があります(民法1005条)。

1.遺言書の種類

民法が定める遺言の方式には、普通方式として、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。その他に、特別方式として、病気等で死亡の危急が迫った場合等に作成される危急時遺言や、伝染病などで隔離された者等が作成する隔絶地遺言があります。

一般的には、普通方式のうち、自筆証書遺言と公正証書遺言がよく利用されています。

1-1.自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言内容の全文、日付、氏名を自署し、押印する方法によって作成される遺言です(民法968条)。

自筆証書遺言は、形式の不備による無効のリスクや検認手続が必要となる等のデメリットはあるものの、一人で費用をかけずに作成でき、遺言内容を秘密にできるメリットがあります。

1-2.公正証書遺言

公正証書遺言とは、証人2名の立会いのもと、公証人が遺言者の口述に基づいて作成する遺言です(民法969条)。

公正証書遺言は、公証人の手数料や証人の手配、内容が公証人や証人に知れてしまう(守秘義務はあります)デメリットがあるものの、検認手続が不要であることや、形式不備で無効となるリスクがほとんどない等のメリットがあります。

1-3.秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言者が遺言書に署名し、印を押した上で封入し、封印した上で、公証人及び証人2名が署名・押印する等の方法によって作成される遺言です(民法970条)。

秘密証書遺言は、公証人による内容のチェックが行われないため、形式不備による無効のリスクや検認手続が必要となる等のデメリットがあります。一方、遺言者が遺言書を封印した上で公証人等に提出するため、遺言の内容を秘密にできる等のメリットがあります。

2.遺言書を発見した場合の手続

自筆証書遺言、秘密証書遺言については、相続人が遺言書を発見した場合、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならないとされています(民法1004条)。

また、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません(民法10043項)。

3.遺言書の検認

前述のとおり、自筆証書遺言及び秘密証書遺言(公正証書遺言以外の遺言)を発見した場合、家庭裁判所において遺言書の検認手続を受ける必要があります。

3-1.遺言書の検認とは

遺言書の検認は、相続人に対して遺言の存在や内容を知らせ、遺言書の偽造・変造を防止し、遺言書の現状を保全するための手続です。家庭裁判所に遺言書が提出されることで、後日遺言書が改ざんされたりすることを防ぐことができます。

ただし、遺言書の検認は、遺言の有効・無効を判断する手続ではないため、遺言の効力を争うためには、別途遺言無効訴訟等による必要があります。

3-2.遺言書の検認手続

遺言書の保管者又は遺言書を発見した相続人は、被相続人の死亡を知った後遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出し、検認を受ける必要があります。また、封印された遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いがなければ開封することができません。

3-2-1.検認手続の申立人

①遺言書の保管者

②遺言書を発見した相続人

3-2-2.検認の申立先

遺言者(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

3-2-3.検認の申立に必要な費用

遺言書1通につき、800

3-2-4.申立に必要な書類

①検認申立書

②遺言者及び相続人の戸籍謄本等

検認が終われば、検認済証明書の申請を行うことで、遺言書に検認済証明書が付され、遺言書の原本を受領することができます。

4.検認を受けなかった場合のデメリット

遺言書を発見したものの検認を受けなかった場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

まず、遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処されます(民法1005条)。

また、実務上は、自筆証書遺言に基づいて相続手続を行う場合、検認を受けていないと手続をすることができません。具体的には、不動産の名義変更(相続登記)や銀行や証券会社の解約手続等において、検認を受けていない遺言書を提出しても、手続を拒否されてしまいます。

したがって、自筆証書遺言(公正証書以外の遺言)を発見した場合は、速やかに検認手続を行う必要があります。

参考条文

民法

(自筆証書遺言)

第九百六十八条

1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

(公正証書遺言)

第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 証人二人以上の立会いがあること。

二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

(秘密証書遺言)

第九百七十条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。

二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。

三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。

四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

2 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

(遺言書の検認)

第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。

3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

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