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相続のよくあるご質問
相続法改正・遺言執行者についての改正点とは

遺言執行者の権限等は、民法改正によってどのように変わりましたか

回答

民法改正により、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するものとされました(民法10121項)。

 

民法改正前は、遺言執行者は相続人の代理人とみなされていたことより、遺言執行者の法的地位が不明確でしたが、改正によって遺言者の意思を実現するために職務を行えばよいことが明確化されました。

 

また、遺言執行者の権限について、特定財産に関する遺言の執行における対抗要件具備行為、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)がなされた場合における登記申請行為や預貯金の払戻し行為等が明確化されました。

 

その他、やむを得ない事由の有無にかかわらず第三者にその任務を行わせることができる等の改正が行われました。

 

解説

1.遺言執行者とは

遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権限と責任を有する者のことをいいます。

 

遺言に記載された内容には、その実現のために一定の手続が必要となるケースがあります。例えば、預貯金の解約、受遺者への財産の引き渡し、財産の分配や不動産の名義変更等が考えられます。

 

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、これらの行為を行う権限と責任を有しています(民法1012条)。

 

2.遺言執行者に関する民法改正の経緯

改正前の民法は、遺言執行者について、相続人の代理人とみなしていました。そのため、遺言の内容が、相続人の利益に反するような場合、遺言執行者と相続人との間で紛争となる可能性がある等の問題がありました。

 

3.遺言執行者に関する民法改正の内容

遺言執行者に関する民法改正のポイントは、次のとおりです。

 

遺言執行者の法的地位

民法改正により、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するものとされた(民法10121項)ため、遺言執行者は相続人の利益のためではなく、遺言の内容を実現するために、その職務を行えばよいことが明確となりました。

 

遺言執行者の行為の効果

また、遺言執行者の行為の効果は、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してしたときは、相続人に対して直接にその効力を生じるものとされました(民法1015条)。

 

相続人が執行を妨害する行為をした場合の効力

改正法においては、遺言執行者がいる場合、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができず、これに違反してなされた行為は、無効であると明文化されました。

 

ただし、遺言の内容は第三者には明らかでないことから、無効をもって善意の第三者に対抗することができないものとされました(民法1013条)。この規定により、善意の第三者は保護されることになります。

 

相続人に対する遺言内容の通知義務

さらに、遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならないとされました(民法10072項)。

 

特定遺贈がなされた場合の権限

特定遺贈がなされた場合、遺言執行者があるときは、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができるものとされました(民法10122項)。

 

 

相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)がなされた場合

いわゆる相続させる旨の遺言は、特定の相続財産を相続人の1人又は数人に承継させる遺産分割方法の指定を定めた遺言(改正法では「特定財産承継遺言」といいます。)と解されています。

 

①不動産について、特定財産承継遺言がされた場合

民法改正前の登記実務では、不動産について特定財産承継遺言がされた場合、遺言執行者は登記申請をすべき権利も義務も有さないとされていました。

 

しかし、改正法のもとでは、遺言で別段の意思表示がない限り、遺言執行者は対抗要件を備える登記申請ができることとなりました(民法1014条2項)。

 

②預貯金について、特定財産承継遺言がされた場合

改正法のもとでは、遺言執行者は、預貯金について特定財産承継遺言がされた場合、通知・承諾といった債権の対抗要件具備行為、預貯金の払戻しの請求及びその預貯金にかかる契約の解約申入れができるものとされました。

 

ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限られます(民法10143項)。

 

遺言執行者の復任権

改正前の民法においては、遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせること(復任)はできないものとされていました。

 

しかし、相続財産の内容によっては、遺言の執行に際して専門的な知識が必要とされる場合も多いことから、改正法においては、遺言執行者は、遺言者が遺言で反対の意思を表示していた場合を除き、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができるものとされました(民法10161項)。

 

なお、第三者に任務を行わせた場合、遺言執行者は原則として当該第三者の行為の責任を負うことになります。ただし、遺言執行者が第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負うものとされました(民法10162項)。

 

 

参考条文

民法

(遺言執行者の任務の開始)

第千七条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

(遺言執行者に対する就職の催告)

第千八条 相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、遺言執行者が、その期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。

(遺言執行者の欠格事由)

第千九条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

(遺言執行者の選任)

第千十条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。

(相続財産の目録の作成)

第千十一条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。

2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。

(遺言執行者の権利義務)

第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。

3 第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。

(遺言の執行の妨害行為の禁止)

第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

3 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。

(特定財産に関する遺言の執行)

第千十四条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。

2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。

4 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(遺言執行者の行為の効果)

第千十五条 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。

(遺言執行者の復任権)

第千十六条 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

2 前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

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