一部の相続人が、相続開始前に被相続人に無断で被相続人の預貯金を使い込んだり、相続開始後・遺産分割協議前に他の相続人に無断で法定相続分を超えて遺産を使い込んだりすることは、不当利得や不法行為にあたります。その場合、他の相続人は、使い込んだ相続人に対し、不当利得や不法行為に基づき、使い込んだ金額のうち自らの相続分に応じて請求することができます。
1.相続開始前に使い込みがある場合
相続開始前(被相続人が生きている間)に使い込みがある場合は、使い込まれた本人が、使い込んだ推定相続人に対して、不当利得や不法行為に基づきその返還を請求することができます。
ただし、本人が認知症などで判断能力が低下している場合は本人自ら請求を行うことができない場合もあります。その場合は、他の推定相続人等が成年後見の申し立てを行い、裁判所から選任された成年後見人等が返還請求をすることになります。
また、相続開始前に使い込みがあり、その後に本人が亡くなった場合は、不当利得返還請求権や損害賠償請求権が相続されることになります。その場合、他の相続人が使い込んだ相続人に対しその相続分に応じて請求することができます。
2.相続開始後に使い込みがある場合
相続開始後に使い込まれた場合は、使い込んだ相続人以外の共同相続人は、使い込んだ相続人に対して、不当利得や不法行為に基づき、その相続分に応じて返還を請求することができます 。
裁判で不当利得返還請求や損害賠償請求をする際には、使い込みの事実や金額を証明する必要があります。そのため、弁護士会照会制度(弁護士に事件を依頼した場合のみ)等により、銀行の取引明細や預金の払戻請求書などの証拠となる資料を取得します 。
3.使い込みに対する請求の消滅時効
不当利得返還請求権や損害賠償請求権には消滅時効があります。不当利得返還請求権は、使い込みをされたときから10年(又は使い込みを知ったときから5年)、不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害発生と加害者を知った時から3年で消滅時効が成立します。
消滅時効が成立し、相手方から援用された場合、請求は認められなくなってしまうので、使い込みが発覚したら早めに対応することが必要です。
※令和2年4月1日以前の使い込みの場合の不当利得返還請求権の消滅時効期間は知っていたか否かにかかわらず使い込みをされたときから10年です。詳しくは弁護士にご相談ください。
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