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相続のよくあるご質問
日本に在住する中国人、韓国人等の外国人が遺言を作成する場合、どのような方法がありますか

日本に在住する中国人、韓国人等の外国人が遺言を作成する場合、どのような方法がありますか

日本に在住する中国人、韓国人等の外国人が遺言を作成する場合、次の2つの点に注意する必要があります。
①遺言の方式が有効であるか
②遺言の内容が、遺言者が国籍を有する国の法律にしたがって有効であるか
以下、それぞれについて解説します。

1.遺言の方式

遺言は、遺言者の死亡によってその効力を生じます。遺言者の死亡時点では、遺言者自身が存在しないため、遺言者の真意を明確にする必要があります。そこで遺言の方式は、厳格に法律で定められています。

日本人であれば、日本の民法が定める方式に従わないと、遺言をすることができません(民法960条)。

2.外国人の遺言とその方式

では、日本に在住する外国人(日本国籍を有しない者)が遺言をする場合、どのような方式であれば、有効に行うことができるのでしょうか。

この点について、遺言の方式の準拠法に関する法律は、次のように定めています。

①行為地法

行為地法とは、遺言をする国等の法律にしたがって遺言をすることを意味します。日本に在住する外国人の場合にあてはめると、日本の民法が定める方式にしたがって遺言をすれば、遺言の方式としては有効ということです。

②遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法

遺言の成立又は遺言者が死亡したときに、遺言者が有していた国籍にしたがった方式のことをいいます。例えば、日本に在住する中国人が、死亡したときに中国籍であれば、中国の法律に定める方式によって遺言をしていれば、その方式については有効ということです。

③遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法

遺言の成立又は遺言者が死亡したときに、遺言者が住所を有していた国の法律にしたがった方式のことをいいます。

④遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法

遺言の成立又は遺言者が死亡したときに、遺言者が常居所を有していた国の法律にしたがった方式のことをいいます。

⑤不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法

不動産に関する遺言については、その不動産の所在地の国の法律にしたがった方式で遺言することができます。例えば日本に在住する中国人がアメリカに不動産を有している場合、不動産に関する遺言については、アメリカの法律にしたがった方式で遺言をすることができます。

以上のいずれかの方式によって作成された遺言であれば、遺言の方式としては、有効な遺言となります。

3.自筆証書遺言と公正証書遺言

遺言の種類には、自分で作成する自筆証書遺言や公証人の関与のもと作成する公正証書遺言等があります。日本に在住する外国人は、いずれの遺言でも作成することができます。

3-1.自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言内容の全文、日付、氏名を自署し、押印する方法によって作成される遺言です(民法9681項)。ただし、外国人が日本の法律にしたがって自筆証書遺言を作成する場合、署名があれば押印はしなくても構いません。

自筆証書遺言は、検認手続が必要であるため、法定相続人が外国にいる場合に、相続人の確定作業や住所の特定作業が煩雑となる可能性があります。この点は外国人が自筆証書遺言を作成する上での一つのデメリットといえるでしょう。

なお、被相続人が外国籍の場合の法定相続人、法定相続分は、原則として本国の法律にしたがって決まります。

3-2.公正証書遺言

公正証書遺言とは、証人2名の立会いのもと、公証人が遺言者の口述に基づいて作成する遺言です(民法969条)。

外国人が日本の法律にしたがって公正証書遺言を作成する場合、日本語で作成する必要があります。遺言者が日本語を理解できない場合は、通訳を手配します。

公正証書遺言の場合、自筆証書遺言と異なり検認手続を要しないため、外国に法定相続人がいる場合でもスムーズに相続手続が可能となるメリットがあります。

また、公正証書遺言は外国においても公的な文書として認められるため、外国における相続手続がスムーズにいくことが考えられます。

4.外国人の遺言とその内容の有効性の判断

遺言の形式については、前述のとおりの方式にしたがっていれば有効です。

しかし、遺言の形式が有効であったとしても、遺言内容が有効であるかどうかは、また別の話になります。例えば、形式上有効な遺言があったとしても、遺言者が認知症を患っていたような場合、遺言能力が争われるケースも考えられます。

遺言内容の有効性をどのように判断するかについては、法の適用に関する通則法に規定があります。

同法によると、相続は被相続人の本国法によるとされ(同法36条)、遺言の成立や効力が争われた場合には、遺言成立時の遺言者の本国法によって判断されます(同法37条)。

したがって、日本に在住する中国人や韓国人などの外国人が、日本の法律にしたがって遺言を作成した場合でも、その内容の有効性等は、中国や韓国など被相続人が国籍を有する国の法律によって判断されることになります。

そのため、外国人が遺言を作成する場合は、その形式のみならず、内容が国籍を有する国の法律にしたがって有効であるかについても、確認することが重要です。

参考条文

民法

(遺言の方式)

第九百六十条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

(遺言能力)

第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

第九百六十二条 第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。

第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

遺言の方式の準拠法に関する法律

(準拠法)

第二条 遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。

一 行為地法

二 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法

三 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法

四 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法

五 不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法

 

法の適用に関する通則法

(相続)

第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。

(遺言)

第三十七条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

2 遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。

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