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相続のよくあるご質問
未成年者の遺産分割協議と調停

相続人が未成年者の場合、遺産分割協議や調停はどのように行えばよいですか?

未成年者は原則として単独で有効な法律行為を行うことができません。したがって、遺産分割協議や調停に参加するのは、未成年者本人ではなく、通常は法定代理人である親となります。
ただし、法定代理人である親も共同相続人となる場合や、共同相続人とはならないものの複数の未成年者の法定代理人となる場合は、利益相反行為となるため、特別代理人の選任が必要となります。

1.未成年者は原則として遺産分割協議の当事者にはなれない

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得る必要があります(民法5条1項本文)。未成年者は判断能力が十分でないことから、単独で有効な法律行為を行うことはできないと考えられているためです。

遺産分割協議は法律行為にあたるため、未成年者が遺産分割協議を行うには、未成年者が法定代理人の同意を得て行うか、法定代理人が未成年者に代わって行う必要があります。

※なお、民法改正により、2022年4月1日より、成人年齢が18歳となりました。

2.未成年者と法定代理人

2-1.法定代理人とは

法定代理人とは、法律によって代理権が与えられた代理人のことをいいます。

2-2.法定代理人の種類

未成年者の場合、法定代理人は、原則として親権を有する父母です(民法824条)。

3.親権を有する法定代理人も共同相続人となる場合

相続の場合、未成年者と親権者(法定代理人)が共同相続人となるケースがあります。例えば、父親が死亡し、母親とその未成年者の子供2名が共同相続人となるような場合です。

このような場合、単独親権者となった母親が未成年者2名を代理すると、母親に有利な内容の遺産分割協議を行う虞があるため、利益相反行為(民法826条)となってしまいます。そのため、母親は家庭裁判所に対し、未成年者の子2名のためにそれぞれ特別代理人を選任することを申し立て、選任された特別代理人2名との間で遺産分割協議を行うことになります。

4.法定代理人は共同相続人とはならないものの、未成年者が複数いる場合

例えば、被相続人Xの子Aが被相続人よりも前に死亡しており、子Aの子(被相続人の孫)G(未成年者)が代襲相続人となる場合、子Aの配偶者Bは被相続人Xの共同相続人とはなりません。

このケースでは、子Aの配偶者BはGの法定代理人として遺産分割協議に参加することができます。

ただし、子Aの未成年の子がG以外にもいる場合、Bが複数の未成年の子の法定代理人として遺産分割協議を行うと、未成年の子同士の利益が相反することになります。そのため、このケースではG以外の未成年の子について、特別代理人の選任が必要となります。

5.法定代理人である親が相続放棄を行う場合

未成年者と法定代理人である親がいずれも法定相続人となる場合であっても、親が家庭裁判所で相続放棄をすれば、親は初めから相続人ではなかったものとみなされるため、利益相反とはならず、親が未成年者の法定代理人として遺産分割協議に参加することができます。

例えば、父親が死亡し、母親、その成年の子1名、未成年の子1名が法定相続人となるような場合、母親が相続放棄をすれば、未成年の子の法定代理人として遺産分割協議に参加することができます。

6.法定代理人が遺産分割協議に参加した場合の遺産分割協議書の記載方法

遺産分割協議書には、共同相続人が末尾に連名で署名・捺印(実印)します。

未成年者の法定代理人が未成年者に代わって遺産分割協議に参加した場合、遺産分割協議書の署名・押印欄は、法定代理人が未成年者に代わって行います。通常は父母が共同親権者であるため、父母双方の署名・押印(実印)が必要となる点には注意が必要です。

未成年者

 住所〇〇

 氏名〇〇

上記未成年者の親権者法定代理人(父)

 住所〇〇

 氏名〇〇 ㊞

上記未成年者の親権者法定代理人(母)

 住所〇〇

 氏名〇〇 ㊞

一方、特別代理人が未成年者に代わって遺産分割協議に参加した場合は、特別代理人が署名・押印(実印)を行います。一般的には、以下のような記載例となります。

未成年者

 住所〇〇

 氏名〇〇

上記未成年者の特別代理人

 住所〇〇

 氏名〇〇 ㊞

参考条文

(未成年者の法律行為)

第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

(利益相反行為)

第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

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